子供の反対咬合(受け口)について

〜ある日の診療室での会話〜

お母さん
子供の反対咬合(受け口)が気になります…両親とも反対咬合(受け口)ではないのに何でですか?
パパ先生
反対咬合(受け口)は遺伝だけでなく、様々なことが原因でなります。今回は子供の反対咬合(受け口)について説明します。

反対咬合(受け口)とは?

下の歯が上の歯より前に出てしまっていることをいいます。
日本人のの発症率は3〜4%であるとされ、様々な要因で発生します。

一番、保護者の方が気になるのはやはり見た目の問題です…上の絵のようにしゃくれた顔貌となり、悪化すると喋り方、食事の仕方も独特となります。

では、どのような原因で反対咬合(受け口)となるのでしょうか?

反対咬合の原因は?

反対咬合の原因は明確にはわかっていませんが、大きくわけると反対咬合(受け口)の原因は2つあるとされます。

反対咬合の原因

1,遺伝的な原因(生まれもった問題)
2,環境的な原因(生まれた後に起きた問題)

遺伝的な原因

保護者から「自分が反対咬合だから、子供も反対咬合(受け口)になる可能性はありますか?」と質問されることがあります。やはり、反対咬合はご両親から受け継ぐ事があり、反対咬合(受け口)になる可能性があります

わかりやすいのが有名な貴族のハプスブルク家の反対咬合(受け口)の遺伝傾向です。

下の家系図を見てください。肖像画からも多くが反対咬合(受け口)です。
中には極端な反対咬合(受け口)のため口は常に開いており、咬み合わせが悪いために食事も困難だったなんて逸話も残っている貴族もいます。

このように、反対咬合(受け口)は遺伝的な傾向を認めます。

また、遺伝的な反対咬合は矯正治療が困難となりやす傾向があります。
特にご両親で反対咬合(受け口)が強く、矯正治療だけでなく外科治療も併用した病歴がある方は子供の矯正治療が難しく、お子さんも外科治療が必要なことがあります。

環境的な原因

誰も、ご家族で反対咬合(受け口)の方がいないのに子供が反対咬合(受け口)になっている。これが環境的な原因によるものです。

環境的な原因とは日頃の日常生活で知らない間に悪いクセがついた状態で起きるものが原因となります。

日常生活で知らない間に悪いクセとは…
・口呼吸
・低位舌
・指しゃぶり

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など様々なことが考えられます。

こんなことで反対咬合になるの??と疑問に思われると思いますが、歯はたった数gの力で動いてしまいます。それを持続的に加えてしまう癖は大きな矯正力となります。

癖が原因で反対咬合になってしまった場合はその癖を早めに治せば、自然と反対咬合が治ってしまうこともあります。また、遺伝的な原因もあり環境的な原因も加わるとより強度な反対咬合になってしまうので注意が必要です。

治療法は?

よくある反対咬合のトラブルとして「矯正装置をいれたら一時的に反対咬合がなおったが、また成長とともに下顎が出てしまい、反対咬合になってしまった…」です。

このように反対咬合の治療は非常に難しいです!!!

これは、成長を予測するのが困難だからです。
確かに、装置を使えば一時的に簡単に治ります、しかし成長するとまた成長につれて反対咬合になってしまうことがあります。これを「後戻り」と僕らはよんでいます。

この「後戻り」を予想しながら矯正治療をする必要がありますが、長い臨床経験と実績が必要となるので反対咬合の矯正治療はプロの矯正歯科医にお願いすることが大事です。

じゃあどんな歯科医院で治療を行えばいいでしょうか??
歯科医院で話を聞くと治療方法は様々な考え方があり、様々な装置があります。よって、医院によっても考え方や使う装置が同じではないので話を聞けば聞くほど悩んでしまいます。

A歯科医院では「今すぐ矯正治療をしたほうがいいですよ!!」
B歯科医院では「前歯が永久歯に変わってからにしましょう…」
C歯科医院では「もしして自然に歯並びが治るかもしれません、様子を見ましょう」

本当に言われることが医院によって異なることがあります。どれが本当??その歯医者を選べばいいの??
僕が今やっている方法も他の先生から言わせると駄目だよ…なんて言われるかもしれません…
また、僕も正直、うーん…この歯医者さん、絶対に矯正経験が少ない…こんな方法で大丈夫??と思うことがあります。

よって、反対咬合の治療で一番大事なのは矯正歯科の選び方です!!

下に矯正歯科の選び方について記事を書きました是非参考にしてください。

どんな矯正方法がいいのか??どんな装置がいいのか?は先生方や考え方によって違いますので今回はあえて書きません。トラブル無く、良い治療を受けたいならば一番大事なのは良い矯正歯科医に出会うことです!

歯科医院で説明される可能性のある装置について説明していきます。

治療時期は??

反対咬合ではこれが一番大事です。

早くからやれば骨・筋肉が柔軟な分だけ早く治ります。

しかし、2歳、3歳だと検査も出来ないし、型を取ることも出来ませんよね…
最近ではマウスピース型の装置が出来たので、簡単に早期から治療が出来るようになりましたが、やはりしっかりと検査・診断が出来ないため「後戻り」などが多いのが実情です。また、既成のマウスピースを入れるだけでいいので、矯正に慣れていない先生まで参入してきており、安易にやることが多くなってきておりトラブルが増えています。

そう考えるとしっかりと型がとれレントゲンが撮影できる年齢の6〜8歳位が適応となります、逆にしっかりと出来るなら早めにもできます。

逆に反対咬合には治療のリミットがあります。

上顎の骨は、9~10歳くらいまでに90%以上の成長が終了します。従って、この時期を過ぎてしまうと、上顎の骨は成長できません。なので9〜10歳までには治療を開始していないと反対咬合の治療が出来なくなってしまいます。

よって、10歳ギリギリだと成長の余力がなくなってしまうので、6~8歳頃から装置を用いて上顎にアプルーチを行い、大きくする治療が必要となります。

6〜8歳までには歯科医院にいって開始時期を相談してください。

反対咬合(受け口)で使用する矯正装置

矯正装置には様々あり、説明するのが困難です。
反対咬合でよく使われる代表的な装置について説明します。

反対咬合の装置

・前方牽引装置
・マウスピース型装置(ムーシールド、T4K、プレオルソ,EFline…)
・筋機能装置(アクチバトール、バイオネーターなど…)

〜番外編 外科手術〜

前方牽引装置

上顎前方牽引装置は小さな輪ゴムを使って、上の顎が前方に成長するのを促すと同時に、下の顎の成長を抑える装置です。

顔にフェイスマスクという装置を当て、口の中には固定式の装置を着けて輪ゴムで前方に引っ張ります。
勿論、家の中にいるときだけ使用します

寝ていると時と家に居るときの10〜15時間程度行う必要があります。

筋機能矯正装置(ムーシールド、T4K、プレオルソ,EFline…)

既成のマウスピースです。
様々な会社から色々な装置が出ており歯科医院によって使うメーカーが違います。

主に就寝時に専用マウスピースをつけることで、舌や口腔周囲筋の状態を整え、反対咬合を改善します。
他の矯正治療と比較して低年齢(3歳〜)から使用することが可能です。

筋機能矯正装置(アクチバトール、バイオネーターなど…)

完全オーダーメイドの矯正装置です。

既成のマウスピースと異なり、細かい調整が出来るので小児矯正が専門の先生は使用することが多いです。
様々な装置がありますが、これも歯科医院によって使うものが違います。

番外編 外科手術

費用について

矯正は自費治療扱いになります。
場所によって全く違います、安くて数万円から高いと100万円超える費用が発生します。

地域によっても異なりますが…
検査
 1〜5万円

矯正本体の費用
 乳歯列期( 子どもの歯だけ)の料金は50,000 ~ 200,000 円
 混合歯列期( 子どもの歯と大人の歯がまざっている) の料金は、100,000 ~ 600,000 円、
 永久歯列期( 大人の歯に交換後) の料金は、500,000~1,300,000 円

毎月の定期検診毎にかかる費用
 3000〜5000円

が1つの目安です。これは勝手な僕の中の目安ですので参考程度にしてください。

また、外科手術が必要なぐらい強い反対咬合の場合は保険適応されることがあります。
下の記事を参考にしてください。

安いのには理由があります
実は矯正前に準備矯正だったり…再度お金がかかったり…

しっかりと納得できるように説明を受けてくださいね!!

今回のまとめ

・反対咬合には様々な原因があります、ご両親に受け口(反対咬合)の外科手術があり、遺伝的な傾向が強いと治療が困難となります。
・医院によって受け口(反対咬合)の考え方が違うため、装置・治療期間が異なります。最終的には保護者が納得できる場所で治療を受けてください。
・治療開始の目安として6〜8歳までには一度相談に行きましょう。
・費用は医院によって異なります。