乳歯の神経を取る治療とは?

〜ある日の診療室の会話〜

お母さん
むし歯が進行して歯の神経が駄目になってしまいました…乳歯の神経を取る(抜く)と言われましたが、どのような治療ですか??
パパ先生
大きなむし歯だったんですね、今回は乳歯の神経の治療について説明します。

歯の構造をご存知ですか??

歯がどんな構造をしているかご存知ですか??

実は歯茎のかくれた部分(根っこ)には歯の神経・血管(歯髄)が入り込んでおり、血液が循環することで歯は生きています。しかし、むし歯が出来ると段々と進行してある段階になると歯の神経(歯髄)が感染して歯が死んでしまいます…

そして、現在の技術では死んでしまった歯は生き返る事が出来ず、死んだままの状態で何とか補強して使用し続ける必要があります。

しかし、死んでしまった歯は折れやすく、放置していると歯の根っこに膿が出来てしまい、周りの骨を溶かして歯がグラグラになり、最終的に抜けてしまいます…そのため、歯科医師により神経の治療を行い、長く使えるように補強する必要があります。

でも、よく保護者から「どうせ乳歯ですよね?そのうち抜けるんですよね??」と聞かれます。
では放置するとどんな事が起きるのでしょうか??

乳歯の神経が悪くなると、どんな影響があるの?

上の写真をみてください。

乳歯のむし歯が進行して、歯の神経(歯髄)が腐ってしまい、膿をもっている状態です。
膿の近くに永久歯の卵があるのがわかりますか??

このように全ての乳歯の下には永久歯が存在しています。

もし、「乳歯だし抜けるまで放置してもいいかー痛みもないし」と思っていると…どんなことが起こるかというと…

こうなります!

乳歯の膿の影響で永久歯の作りが悪くなり(エナメル質形成不全)、また変なところから永久歯が萌出してきてしまいます。一生使う歯なので、永久歯の形が変になったり、歯並びが悪くなったら困りますよね??

だから乳歯のむし歯を放置してはいけないんです!!

乳歯の神経の治療とは?

手順を追って説明していきます。
この治療の目的は歯の根の先にたまった膿を除去していくことです。手順を簡単に説明させて頂きます。

1,歯の状態を確認します
レントゲンを撮影し、現在の状態を把握します。
永久歯に影響が出るぐらい膿が大きな場合や乳歯の根っこが吸収している場合は抜歯となります。
治療が可能だ!と判断できたら、歯の根っこの治療を開始していきます。

2,むし歯を取り除きます。
原因となったむし歯を取り除きます。
これをしっかりとしないと感染源が残ってしまう為に予後が悪くなります。

3,歯の根っこの汚れを取り除きます
歯の根っこは細く、通常の器具では届きません。
なので、針金のような器具(リーマー)を用いて汚染された歯髄(歯の神経)を除去していきます。
ゴリゴリと根っこの周りに残った細菌を削りとります。

4,膿がなくなったら消毒液を根っこにいれて蓋をします
乳歯は吸収してしまうため、大人のように永久的に持つ薬を入れられません。
乳歯にいれる薬は液体状のため、吸収されやすく再度悪くなるの可能性があります。

5,蓋をして終了
薬がもれないようにしっかりと蓋をします。
どうしても歯の神経を抜くと歯は脆くなりやすいです。よって、補強するためも最終的には銀歯を被せる治療が一般的です。

乳歯の神経の治療の注意点

乳歯の神経の治療は難しいです…完璧にやることは不可能です。

よって、神経の治療をしたからといって、永久歯が交換する前に悪くなることもありえますし、永久歯が控えているので無理に乳歯を残そうとすると永久歯へのダメージが予想されます。

保護者から「ギリギリまで抜かないで残してください!」とお願いされることがありますが、僕は次のように説明しています。

「残り2〜3年使う乳歯より、今後80年使用する永久歯を大事にしてください」

よって、抜歯が必要な場合は抜歯して頂くことが、永久歯のトラブルを避けることに繋がります。
交換期前に抜歯した場合には次のような装置が必要となりますでの参考にしてください。

よくある「歯の神経の治療」についての質問

保護者の方によく質問される内容をまとめてみました。

よくある質問

・乳歯の神経を取ると永久歯の神経まで無くなるんですか?
・歯の神経をとるとどうなりますか?
・神経を抜いても自然に抜けますか?
・こんなになるまで痛く無かったんですか??
・このまま放置するとどうなりますか?

乳歯の神経を取ると永久歯の神経まで無くなるんですか?

乳歯の神経と永久歯の神経は別々です。

乳歯の神経をとっても、永久歯の神経はなくなりません。

歯の神経をとる(抜く)とどうなりますか?

よく「木」で例えられますが、生きてる木は水々しく、ある程度の衝撃でも折れてたりしません。
枯れてしまった木は水分が無くなり簡単に折れやすいなります。

歯も同じで神経をとってしまうと脆くなります。
噛む力で割れてしまったりするので出来れば、全部被せる(銀歯)などの処置が必要となります。

神経を抜いても自然に抜けますか?

勿論、自然に抜けます。

しかし、歯の神経を取ると悪くなりやすく、むしろ早めに抜けてしまうことが多いです。
歯の神経をとった場合には歯医者さんに状態を管理してもらってください。

こんなになるまで痛く無かったんですか??

よく、「歯の神経が悪くなっても本人は痛くならないんですか?」と質問されます。

子供の場合はむし歯の進行が早く、また骨が密ではないため、大人と比較して痛みがなく神経が死んでしまうことがあります。しかし、よく話を聞いてみると、食べ物を噛んだ時に違和感があった、少し軽く痛かった…なんてことも訴えることもありますので注意してください。

このまま放置するとどうなりますか?

神経が死んだまま放置すると、歯と歯を支えている骨が溶けて勝手にグラグラして抜けてしまいます。

早期に抜けてしまうと歯並びに影響したり、次の永久歯の形が変になったり、後々トラブルの原因となります。放置するには危険ですのでしっかりと治療が必要となります。

まとめ

乳歯だからといって放置していはいけません。どうせ抜けるから…永久歯出てくるから大丈夫…

これでは様々な悪影響を及ぼします。是非適切な治療をしてもらってください。